辰巳天井は警戒すべきか

上級研究員 小池 理人

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 今年も残すところ一ヶ月余りとなった。年の変わり目になると、干支にまつわる相場格言が話題にあがりやすくなる。2024年(辰年)と2025年(巳年)の相場格言は「辰巳天井」であり、辰年と巳年に株価が天井をつけやすいことを意味している。過去の日経平均株価のデータをみると、確かに天井をつけている年が少なくない(図表1、図表2)。1970年代までに確認できる天井は踊り場に近いものであるが、1980年代以降の天井は日本のバブル崩壊前(1989年(巳年))とITバブル崩壊前(2000年(辰年))といった歴史的な転換点となっている。
 今回の辰年(2024年)は、株価の急激な上昇局面に位置しており、年末に急激な変化が無い限り、高水準での株価は巳年(2025年)に引き継がれることになるだろう。チャートの形状をみると、1988年(辰年)・1989年(巳年)を彷彿とさせ、辰巳天井という相場格言が頭をよぎる。もちろん、当時はPERが60倍を超える状況であったため、両者を同じように扱うことは適切ではない。一方で、足もとのリスク要因を確認すると、主要先進国における利上げの累積効果の発現や政治的に不安定な日本の状況、世界的な地政学リスクの高まりなど、株価が大きく下落するリスクは枚挙に暇がない。辰巳天井という言葉を無下にすることができない環境であることも、また事実である。
 言うまでもなく、干支に関する相場格言はあくまでも縁起話や経験則であり、株価の先行きを示すものではない。また、過去のパフォーマンスについてみると、巳年の年間騰落率は他の年と比較して大きく劣後するわけではなく、勝率もそれほど悪くない(図表4)。それでも、株式市場が過度に楽観的となる局面に遭遇した際に、辰巳天井という言葉を思い出し、警戒心を持つことは、相場に対峙する上でご利益のあるお守りになるかもしれない。

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