自動運転トラックと貨物鉄道のモーダルコンビネーションの検討始まる
~新しい輸送モデルと新型コンテナによる輸送の効率化に期待~

上級研究員 水上 義宣

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2024年11月21日、日本通運、全国通運、日本フレートライナー、JR貨物、T2 の5社は、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせたモーダルコンビネーション実証実験の検討を開始すると発表した1

長時間労働の是正やトラック運転手不足等を背景に、トラックの輸送力は2030年度に34.1%不足2するとされており、自動運転トラックの開発や、船舶、鉄道貨物といったトラック以外の輸送手段を活用するモーダルコンビネーションが注目されている。政府も「2030年度に向けた政府の中長期計画」において、自動運転トラックの実装や、今後10年での船舶、鉄道貨物輸送量の倍増を掲げている。

今回の発表では特に、将来の姿として示されている「「自動運転トラック×貨物鉄道」モーダルコンビネーションの輸送モデル」と、実証実験にあたって開発される「スワップボディ用31フィートコンテナ」が注目される。

「自動運転トラック×貨物鉄道」モーダルコンビネーションの輸送モデルでは、自動運転トラックと貨物鉄道の役割分担がポイントとなる。プレスリリース記載のイメージでは、関西~関東間の輸送を自動運転トラック、関東以北と関西以西の輸送を貨物鉄道が担い、集荷・配送先と駅の間の輸送は運転手が運転するトラックが行うパターンを例としている≪図表1≫。

≪図表1≫「自動運転トラック×貨物鉄道」モーダルコンビネーションイメージの例

このモーダルコンビネーションにおいて、関東~関西間の輸送を自動運転トラックが担う理由は二つある。

一つは、自動運転トラックは、現状では道路側のセンサー等による支援が必要となることだ。政府は、新東名、新名神高速道路を中心に自動運転支援レーンを整備する方針を示しており、自動運転トラックが早期に実現できるのは関東~関西間となる4

もう一つは、鉄道の輸送力(キャパシティ)と荷主のニーズの偏りのミスマッチである。鉄道貨物の積載率は2024年度上半期71.7%5となっているが、荷主のニーズは特定の路線・曜日・時間帯に偏りがちである6。こうした条件に合う列車の積載率は既に高く、トラックの荷物を鉄道貨物にシフトさせるには増便が必要となる。

しかし、関東~関西間を結ぶ東海道本線は、夜間数分おきに貨物列車が設定されており、線路の保守点検時間等を考慮すると増便は容易ではない7。このため、関西以西に空きがあっても関東~関西間に空きがなければ貨物列車の利用は難しく、また空いている列車を待つことによる時間のロスが発生する。

また、東京を発着する貨物が多いこと、通勤電車とのダイヤ調整を要すること等から、多くの貨物列車が関東以北からは東京北部の隅田川駅、関東以西からは東京南部の東京貨物ターミナル駅に発着している≪図表2≫。このため、東北・北海道方面から中京・関西方面への貨物は、東京をう回して両方向を直通する列車を利用する必要があり、列車の選択肢が少ない。

関東~関西間の輸送に自動運転トラックを使い鉄道の輸送力を補完することで、こうしたボトルネックを回避し、空いている列車や直通列車を待つことによる時間のロスの削減や、空いている列車や区間の利用増による有効活用につながることが期待される。

≪図表2≫東京付近における貨物列車の運行イメージ

鉄道貨物とトラックのモーダルコンビネーションをスムーズにするために開発されるのが、スワップボディ用31フィートコンテナだ≪図表3≫。貨物鉄道では、中小型トラックの荷台とほぼ同サイズの12フィートコンテナが使われてきた。しかし、大型トラック相当の荷物を積もうとするとコンテナが2~3個必要となり、大型トラックの荷台に積む場合と比べると重量や容積、積み方が制限されたり、積み降ろしの手間が掛かったりして、効率が悪い。そこで、大型トラックの荷台とほぼ同サイズの31フィートコンテナの利用が進められている8

ただし、大きな31フィートコンテナの積み降ろしにはトップリフターと呼ばれる専用重機等が必要となる。このため、集荷先や配送先でコンテナをトラックの荷台から取り外すことは難しく、荷物の積み降ろしの間、トラック運転手が待機する必要がある。また、自動運転トラックの場合も、トラックの回転効率が悪くなると考えられる。

≪図表3≫開発される31フィートコンテナのイメージ

トラック運転手の長時間労働是正の面からも、荷物の積み降ろしや待機の時間にあたる、荷待ち・荷役時間の短縮は重要な課題だ。大型トラックにおいてこうした荷待ち・荷役と運転を切り離す「荷役分離」を進める方法として、荷台とトラック本体を切り離すことができるスワップボディの導入が進められている≪図表4≫。

≪図表4≫スワップボディ

今回の実証実験では、スワップボディに対応した新型コンテナを開発するという11。スワップボディ対応のコンテナが使用されることで、単に自動運転トラックと貨物鉄道の積み替えが容易になるというだけでなく、運転手が運転するトラックを使った、駅からの集荷・配送においても荷役分離が可能となり、トラック運転手の長時間労働是正により大きく寄与することが期待できる。

プレスリリースでは、以上の輸送モデルについて、まずは関東~関西~九州間で2025年5~6月に実証実験を実施し、①関西の貨物駅でのスワップボディトラックから貨物列車へ共用コンテナの積替えの検証、②関東~九州間トータルのオペレーション検証、③輸送リードタイムの短縮検証を行うとしている。

鉄道貨物の有効活用という観点を考えれば③輸送リードタイムの短縮について、単に積み替えの時間が短縮されるというだけでなく、積載率の低い列車や区間が有効に活用されたか、空き列車待ちの時間が短縮されたかが重要となるだろう。

また、スワップボディ用31フィートコンテナについては、実証実験での積み替え検証で効果が確認され改良が重ねられれば、自動運転トラック用に限定しない、JR貨物での導入、利用の拡大を期待したい。

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