トラック運送の規制徹底に向けた動きが加速
~10月1日から勤務時間等違反が厳罰化~

上級研究員 水上 義宣

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トラック運転手の長時間労働を是正するため、2024年4月1日からトラック運転手の拘束時間等に関する規制が強化された。これにより輸送能力が最大14%不足1すると懸念され、「物流の2024年問題」といわれた。

トラック運転手の拘束時間等は、厚生労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、「改善基準告示」)に定められている。改善基準告示は、一日の拘束時間のほか、月間、年間の拘束時間等をそれぞれ定めているが、改正前後の拘束時間の減少幅は、年間上限が最も大きい≪図表1≫。従って、年間拘束時間の上限が問題となる2024年度後半に輸送能力不足がより深刻化すると考えられる。年度後半ほど運送を断られる場合や、改善基準告示違反が出てくる可能性が懸念される。

≪図表1≫改善基準告示の改正

国土交通省はトラック運送の適正化を図るため、飲酒運転の厳罰化等と合わせ、改善基準告示違反についても行政処分量定を2025年初に引き上げる方針を示し、2024年7月1日からパブリックコメントを実施していた。同パブリックコメントの結果、早期施行を図るべきだという意見3もあり、行政処分量定の引き上げが2024年10月1日に前倒しで施行されることとなった。

勤務時間違反等による行政処分は、違反件数に応じて車両停止等が科せられるが、6件以上の違反で量定が引き上げられ、また車両停止の上限(現行40日車4)が廃止となる≪図表2≫。従って、改善基準告示によりトラック運転手の拘束時間が減少し、これに違反した運送会社は、さらに長期間にわたってトラックを使用できなくなる。

≪図表2≫改善基準告示等違反に対する行政処分量定の改正

運送会社に対する規制強化が進む中、運送を依頼する荷主の側にも法令遵守の意識が求められる。荷主等に対する規制強化として、2024年5月15日に改正物流効率化法等が公布され、公布1年後にあたる2025年5月15日までに施行される。改正物流効率化法は、取扱貨物量の多い事業者を「特定事業者」として指定し、物流効率化に向けて、物流統括管理者の選任や物流効率化に関する中長期計画の策定、定期報告の実施等を求めている6

国土交通省、経済産業省及び農林水産省は、改正物流効率化法の施行に向けて、特定事業者の指定基準等を決定するため、2024年6月から3省合同会議7を開催しており、2024年9月27日にその中間とりまとめ案がパブリックコメントに付された。中間とりまとめ案では、特定事業者の指定基準について、日本の貨物量の半分程度を対象とすることを前提に、荷主は貨物取扱量9万トン以上、倉庫業者は保管貨物量70万トン以上、トラック事業者は保有車両数150台以上を対象とする案を示している≪図表3≫。

≪図表3≫改正物流効率化法による特定事業者の指定等の案

今後は、2024年10月26日にパブリックコメントが締め切られ、2025年初には具体的規制が示される見込みだ。2025年の改正物流効率化法施行に向け、荷主に対する規制の具体化が加速する。

また、国土交通省は2025年度予算の概算要求で、悪質な荷主への調査や指導を行うトラックGメンの強化等を含む「商慣行の見直し」に2024年度比2.3倍の1億49百万円を要求しているほか、改正物流効率化法に基づく中長期計画のモニタリングにも44百万円を要求している9。2025年度以降は、トラック運送事業者への取締りだけでなく、荷主への調査、指導も強化されると考えられる。

2025年度以降に向けては、荷主とトラック運送事業者、倉庫業者が協力し、荷待ち・荷役時間の削減、共同輸配送等による輸送の効率化、適正な運賃の支払いといった、運送の適正化が進められるかどうかが重要となる。

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