党員票から振り返る自民党総裁選
~高齢者比率3割が都道府県票獲得の分かれ目に~
9月27日に行われた自民党総裁選で石破氏が自民党総裁に選出された。第一回投票では高市氏が国会議員票・総党員算定票共に石破氏にリードしたものの、決選投票においては議員票・都道府県票共に石破氏が高市氏を上回り、勝利する形となった(図表1)。党員票は第一回投票においてはドント方式1で候補者に配分され、決選投票では上位2人のうち各都道府県で得票数の多い候補者が都道府県票を獲得する。
ここで、決選投票における両候補が得た都道府県票をみると、高齢者比率(本稿では65歳以上の割合を高齢者比率とする)の高い地域(≒地方)に支持される石破氏、高齢者比率の低い地域(≒都市部)に支持される高市氏という、明確な違いが浮かび上がる(図表2)。具体的に数字を挙げると、高齢者比率が30%を上回る地域では石破氏が、高齢者比率が30%未満の地域では高市氏が都道府県票を得る傾向にあった。とりわけ、高齢者比率が30%未満の地域においては高市氏が8割を超える都道府県票を得ており、その傾向は顕著であった2。高齢者比率が30%以上の地域における石破氏の勝率も7割弱となっており3、高齢者比率(≒都市か地方か)による投票行動の違いがうかがえる。
新総裁となった石破氏は、掲げている地方創生2.0を実行することによって地方からの支持者の期待に応えていくことが期待されている。疲弊する地方の活性化は確かに急務である。一方で、金融市場の反応からは、経済全体のパイを拡大する観点で、ビジョンが十分に伝わっていないように見える。来月にも衆院解散・総選挙が行われると報じられており、来年にも参議院選挙や都議会選挙が控えている。支持を集めた地方のみならず、経済成長のビジョンを示すことで都市部の支持も得られるか否かが、今後の注目点となるだろう。
- ドント方式とは、各候補者の得票数を1、2、3と整数で順に割っていき、得られた数の大きい順に一票ずつ配分していく方式。
- 高齢者比率が30%未満の県で高市氏が都道府県票を得られなかったのは、沖縄県と得票率1%未満の僅差で石破氏が高市氏を上回った滋賀県のみ。
- 高齢者比率が30%以上の県で石破氏が都道府県票を得られなかったのは、高市氏の選挙区である奈良県、他候補の選挙区である岡山県や山口県(石破氏・高市氏が1位でない県)、得票率1%未満の僅差で高市氏が石破氏を上回った新潟県など。