拡大するダブル連結トラックの運行
~休憩施設の整備が鍵、複数縦列式駐車マスに期待~

上級研究員 水上 義宣

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トラック輸送は、低賃金・長時間労働であること等から深刻な運転手不足である。そこで、大型トラックにトレーラーを連結し、一人の運転手が大型トラック2台分の荷物を運べるようにしたダブル連結トラック≪図表1≫に注目が集まっている。

≪図表1≫ダブル連結トラック

日本の道路では全長12mを超える車両は通行に特殊車両通行許可が必要とされている。特に、全長が25mあるダブル連結トラックは、指定された高速道路を主に走行することを条件に個別に許可される。

許可対象の高速道路は順次拡充されており、2024年9月17日から新たに中国道等が対象となった≪図表2≫。これにより神戸~山口間では山陽道と中国道の双方が通れるようになり、山陽道が事故等で通行止めになった際も中国道へう回することが可能になる。また、新潟県内の北陸道や上信越道へ対象区間が拡充されたことで、大阪方面から新潟方面まで日本海側を走行できるようになる他、首都圏西部では従来圏央道までしか許可されていなかった対象区間が外環道まで広がり、より東京都心に近い物流センターまで乗り入れることが可能となった。

≪図表2≫ダブル連結トラックの通行許可区間と2024年9月17日からの拡充区間

ダブル連結トラックの運行を拡充するにあたって、重要となるのが休憩場所の確保である。トラック運転手は厚生労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」)により4時間走行毎に合計30分以上の休憩をとることが定められている。このため、高速道路を長距離走行する場合はSA・PA等での休憩が必要となるが、全長25mあるダブル連結トラックは専用駐車マスがなければ駐車することができない。

国土交通省はダブル連結トラック運行許可の拡充区間は、①ダブル連結トラックの運行について事業者のニーズがある、又は災害等による通行止め時の迂回路として活用できる区間、かつ、②高速本線について4車線以上であり、構造上の支障等がない区間について、休憩場所や発着地を調査して選定したとしている3

ダブル連結トラックの許可件数は2024年3月現在414件と増加しているものの、運行したい区間について国土交通省と調整し、休憩場所も高速道路会社等と連携して、確保する必要があることもあって、活用は特定の物流会社にとどまる。2024年3月現在の申請者数は16社にすぎない≪図表3≫。

≪図表3≫ダブル連結トラックの申請者数、許可件数の推移

また、2024年8月現在、ダブル連結トラックの通行には個別に特殊車両通行許可申請が必要で、オンラインで通行可否が確認できる特殊車両通行確認制度の対象外となっている。国土交通省は、ダブル連結トラックの更なる普及を図るため、2024年度中にダブル連結トラックの通行許可をオンラインで確認できるよう特殊車両通行確認システムの改良を予定している5

ただし、特殊車両通行確認制度の対象となっても、休憩場所が容易に確保できないようでは本格的な普及は困難だろう。大型トラックの駐車マスは深夜帯を中心に既に混雑しており、ダブル連結トラック用の駐車マスを更に確保することは容易ではない。高速道路会社は、ダブル連結トラック優先マスや予約マスを設定しているが、今後台数が増えてくれば予約困難となると考えられる。

そこで、注目されるのが複数縦列(コラム)式駐車マスである≪図表4≫。従来はバラバラの時間に出発することを前提に、SA・PAの駐車マスは一台ずつ出入りできるように整備されてきた。このため、多くの通路を必要とするほか、大型トラックとトレーラー、ダブル連結トラックが駐車マスを共有することはできなかった。

これに対し、複数縦列式駐車マスは改善基準告示に基づく休憩30分で出発するトラックが多いことに注目し、同じ時刻に出発するトラックを縦列駐車させる方式で、既にドイツ等では導入されているものだ。一斉に出発しなければならず、駐車場所を指定して誘導する必要はあるが、通路を減らし駐車マスを増やすことができる。また、縦列になるため例えば大型トラック3台縦列を前提として36m強の駐車マスを用意すれば、全長12mの大型トラック、全長18mのトレーラー、全長25mのダブル連結トラックを組み合わせて駐車させることができると考えられる。

日本では、複数縦列式駐車マスは2024年8月30日に中国道鹿野SA下り線での実験が始まった6ばかりで、今後は山陽道佐波川SA下り線での整備が検討7されている。将来の導入にあたっては、単に大型トラックを縦列駐車させるだけでなく、大型トラック、トレーラー、ダブル連結トラックの兼用マスとする等の柔軟な運用を期待したい。

≪図表4≫複数縦列式駐車マスと期待されるイメージ
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