米消費が減少する中、なぜ米価は上昇するのか

上級研究員 小池 理人

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 米の相対取引価格が上昇を続け、約11年ぶりの高値水準となっている。背景にあるのは需給の逼迫だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって緩んだ主食用米の需給は、2021年10月の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除により底を打ち、その後は需給のタイト化が進んでいる(図表1)。しかし、家計調査の米消費量をみると、家計における米類の消費は減少傾向での推移が続いている(図表2)。何が米の需給を逼迫させているのであろうか。

需給逼迫の要因として、生産量の減少が挙げられる。水稲(主食用)の収穫量は、長期に渡って減少傾向での推移が続いている(図表3)。2013年に5年後に減反を廃止する方針が決定されて以降、収穫量が減少し、2018年に実際に減反が廃止された後、収穫量は横ばい程度で推移していたが、コロナ以降に再び収穫量が減少している。こうした動きに、猛暑による不作が追い打ちをかける形で供給が細っているものとみられる。
 輸出の増加も需給逼迫の要因となっている。米の商用輸出数量は16年連続で増加しており、足もとでは20%台後半の伸びが続いている(図表4)。生産量全体に占める輸出数量の割合はまだ低いものの、インバウンドの回復を背景とした日本の米及び米加工品の認知度向上も相俟って、更なる需要の拡大が期待される。

主食用作付面積についても減少が継続しており、米の供給能力は低下し続けている(図表5)。新規就農者も減少し、かつ高齢化が進んでおり、人員面でも危機的状況にある(図表6)。高齢化が進展する中で耕作放棄地が増加し、作付面積は更に減少してくことが危惧される。こうした中、米の供給力を維持・増強することは急務であり、解決策の一つとしては株式会社の農業参入の規制緩和が考えられる。土地を集約することで農業の生産性を向上させ、高い賃金で若い世代の農業への参画を促すことが可能になる。実際、一人当たり付加価値額と作付面積との間には相関関係がみられ、土地の集約が付加価値を向上させ、所得向上のための原資を生み出していることが示されている(図表7)。日本の米は既に保護されるべき弱い存在ではなくなってきている。急速に輸出を伸ばしている強い産業の一つであり、保護よりも成長に舵を切る時期に来ている。

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