ひとり親の「小1の壁」
「小1の壁」とは、子どもの小学校入学にあたって、仕事を持つ親が、従来通りの仕事と子育ての両立が困難になる状態を指す。ひとり親家庭にとって、「小1の壁」は極めて深刻な問題だ。
当社では2024年1月、小学校の子を持つ親を対象にアンケート調査を行った。その中で、子どもが小学校に入学した時における、就業形態の変更状況も調査している。本稿ではこのアンケート調査を基に、ひとり親にとっての「小1の壁」の現状を確認し、そこから示唆される課題について考察したい。
アンケート結果を家庭状況別に見ると、就業を継続しながら、何らかの変更をした割合(「より子育てのしやすい職場への転職を検討した」「同じ職場の中で、職種や仕事内容、雇用形態などの立場を変更した」「同じ職場・同じ仕事内容で、始業時刻や短時間勤務、テレワークなど勤務形態の変更や制度利用をした」「その他」の合計)は、全体では約18%となっているが、ひとり親家庭では約27%と高くなっている。
子どもが小学生になると、その親は、保育園等の預かり開始時間より遅い、小学校の登校時間に合わせて始業時間を調整する必要や、放課後児童クラブの終了時刻までに迎えに行くために、勤務時間を調整する必要が生じるケースがある。そのため、従来の就業形態では対応しきれず、転職する場合や、転職しないまでも、登下校時に子どもを見守る人がいない場合に、勤務時間の調整が必要になったことが、就業を継続しながら何らかの変更をした背景と考えられる。
母子家庭・父子家庭別に見ると、母子家庭では「より子育てのしやすい職場へ転職した」が約13%と高く、父子家庭では「同じ職場・同じ仕事内容で、始業時刻や短時間勤務、テレワークなど勤務形態の変更や制度利用をした」が約14%と高い。これは、父子家庭の親は、母子家庭の親に比べて、正社員である場合が多く、正社員の場合には、職場や仕事内容を変えずに対応しようとする傾向が強いことが背景にあるだろう。
ひとり親は、子育てと生計の維持を一人で担う場合が多く、日々の生活において様々な困難を抱えているケースが多い。一部の自治体では、働く親の子どものために、新たに見守り員を配置した上で小学校の校門の開放時間を早める取組を実施している。働く親、とりわけ、ひとり親にとって、「小1の壁」を低くすることに寄与する取組である。こうした先行的な取組を参考に、全国の自治体で、働く親のニーズや地域の実情に応じた取組が広がることを期待したい。
こうした自治体における取組に加え、「小1の壁」の解消に向けては、短時間勤務制度を子が小学校卒業するまで利用できるようにする等、事業主による仕事と子育ての両立支援に向けた積極的な取組も望まれる。