加速する自動運転トラック開発
~物流課題の解決には他の輸送モードとの連携が鍵~
2024年6月6日、T2が2024年度内に綾瀬(神奈川県)~西宮(兵庫県)の間で2024年度までに自動運転トラックの実証実験を行うと発表した1。T2は2025年度に関東~関西間で自動運転トラック事業を開始することを目標としており、まずは政府が自動運転支援サービス道路として整備を予定している新東名高速道路の駿河湾沼津(静岡県)~浜松(静岡県)間からレベル2の実証実験を始めた。今後、徐々に実験区間を伸ばすとしている。
自動運転トラックについては、既に高速道路での大型トラックによるレベル4の自動運転実現を目指すTuSimple JAPANが2023年1月~10月に厚木南(神奈川県)~豊田(愛知県)間で実証実験を行ったと発表している2ほか、いすゞが2024年4月3日発表の中期経営計画3で2027年度以降のサービス開始を表明する等、開発が盛んとなっている。
この背景には、少子高齢化や長時間労働低賃金によるトラック運転手の成り手不足がある。NX総合研究所によると2030年度営業用トラックの輸送力は34.1%不足すると試算されている4。このため政府は「2030年度に向けた政府の中長期計画」や「デジタルライフライン全国総合整備計画」において、鉄道や船舶の活用、自動運転支援サービス道路の整備や、全く新しい輸送システムである物流専用道路の構築を進めるとしている。このうち自動運転支援サービス道路は、2024年度に駿河湾沼津~浜松間、2027年度までに関東~関西間と東北自動車道等、2034年度までに東北~九州間の整備を行う計画となっている。
日本の物流量は《図表2》のとおり、関東~中部~関西間が1日あたりの貨物流動量が15万トンを超える幹線となっており、自動運転トラック、物流専用道路ともに関東~中部~関西間を結ぶ新東名、新名神高速道路を軸として検討が進んでいる。
なお、関東~関西間はJR東海道本線の線路容量が既に限界に近付いているため、貨物列車の増発が難しい5他、紀伊半島をう回することから船舶の活用も難しく、モーダルシフトに限界がある。
一方で、野村総合研究所がトラック運転手の地域別不足数を《図表3》のとおりと試算する等、トラック運転手の不足は必ずしも関東~関西間や東北自動車道といった幹線にとどまるものではない。また、関東から中四国・九州といった関西以西への輸送では関東~関西間を経由するものの、その先への輸送方法も考慮する必要がある。
このため、関西以西や日本海側等、自動運転支援サービス道路の整備等が短期的に予定されていないが、トラック運転手不足が深刻化すると考えられる地域に対しては、特に鉄道輸送等のモーダルシフトを加速させることや、関東~関西間及び東北自動車道を走行する自動運転トラックとの間で荷物を積み替え中継して輸送することが必要となる6。このように様々な輸送モードを組み合わせることをモーダルコンビネーションというが、自動運転トラックを使ったモーダルコンビネーションへの投資も出ている。
例えば、三菱地所は2023年2月3日に京都府城陽市7、2024年6月7日に宮城県仙台市8に自動運転トラックを見据えた高速道路直結の物流施設を開発すると発表した。また、JR貨物も2024年2月9日にT2に出資し貨物鉄道と自動運転トラックのモーダルコンビネーションを推進すると発表9している。
長期的な輸送力不足の課題解決に向けては、以上のようなモーダルコンビネーションへの投資や自動運転支援サービス道路を含め、関東~関西間での実用化から、いかに早く自動運転トラックを活用できる環境を全国に整備していけるかが鍵となるだろう。
- https://t2.auto/news/0606.pdf(最終閲覧日:2024年6月10日)
- https://kyodonewsprwire.jp/release/202310241622(最終閲覧日:2024年6月10日) なお、TuSimple JAPANの発表ではレベル4相当の実証実験としているが、保安要員を運転席に乗車させており、Logistics Todayの報道ではレベル2とされている(https://www.logi-today.com/563887(最終閲覧日:2024年6月10日))。走行している区間に違いはあるが、レベル4相当の車両を使用し、レベル2の実証実験を行っているという点ではT2とTuSimpleの自動運転レベルはほぼ同等と考えられる。
- https://www.isuzu.co.jp/newsroom/details/20240403_1.html(最終閲覧日:2024年6月10日)
- https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/003_01_00.pdf(最終閲覧日:2024年6月10日)
- 国土交通省 第 2 回今後の鉄道物流のあり方に関する検討会(2022 年 4 月 28 日)東海旅客鉄道資料
- 詳しくはSOMPO Institute Plus Report「モーダルシフトに見る自動運転トラックの展望と課題 ~物流の2024年問題とモード間接続の重要性〜」を参照 https://www.sompo-ri.co.jp/wp-content/uploads/2023/09/qt83-2.pdf
- https://www.mec.co.jp/news/archives/mec220203_logicross.pdf(最終閲覧日:2024年6月10日)
- https://www.mec.co.jp/news/detail/2024/06/07_mec240607_logi(最終閲覧日:2024年6月10日)
- https://www.jrfreight.co.jp/info/2024/files/20240209_01.pdf(最終閲覧日:2024年6月10日)