Q3.上司のサポートが組織に与える影響は?
Q. 上司のサポートが組織に与える影響は?
A. 上司のサポートは、エンゲージメントにプラスの影響を与える
また、営業成績にもプラスの影響が確認できる
上司のサポートが組織にどのような影響を与えるか、ストレスチェック(職業性ストレス簡易調査票)の「上司からのサポート」の集団分析のスコアを用いて確認してみました。ストレスチェックの「上司からのサポート」は、「気軽に話しができる」、「困ったとき頼りになる」、「個人的な相談ができる」の3つの設問から構成されています。設問の内容から、メンバーからみた上司のコミュニケーションの好ましさの度合いを計測していると捉えられます。
前年度の上司のサポートと当年度の組織のエンゲージメント(eNPS、各営業拠点の平均値)とを見ると、前年度の上司のサポートが高いと当年度のエンゲージメントが高くなる傾向が 確認できます(図 3-1)。グラフは1年度分のみ示していますが、他の 年度も同様の傾向がみられ 、因果推論の手法を用いた分析では一定の因果関係が確認されました。上司のサポートは、エンゲージメントにプラスの影響を与えているといえます。
また、上司のサポートは、営業成績にもプラスの影響がみられます。図3-2は、2019年度の上司のサポートのスコアが上位25%、下位25%の営業拠点を抽出し、2019年度、2020年度の営業目標の達成状況を比較したものです。上位25%に属する営業拠点の方が営業目標の達成率(達成するかしないか)が高いことが示されています。他の年度でも同様の結果になっています。
上司のサポートが直接営業成績に影響を与えるのか、上司のサポートがメンバーのエンゲージメントを高める効果により営業成績に影響を与えているのか、分析からは明らかになっていません。ただし、上司がメンバーとの好ましいコミュニケーションを確立すると、メンバーのエンゲージメント向上にも、営業成績の改善にも寄与する可能性が高いといえます。
また、ストレスチェックでは、同僚のサポートについても、上司のサポートと同じ3つの設問で計測しています。分析からは、同僚のサポートは営業成績にも、エンゲージメントにも有意な影響を与えないという結果が示されました。
ところが、組織のエンゲージメントが高いと、同僚のサポートを高めるという逆の関係が確認できました(図3-3 左)。また、同様の関係は上司のサポートとの間にも見られます(図3-3 右)。エンゲージメントが高いメンバーは、組織貢献への意欲が高く周囲とのコミュニケーションにも積極的に取り組んでいる状態を表しているのではないかと考えられます。
上司のサポートとエンゲージメントの関係は、双方向の因果関係が確認された点に注目したいと考えています。上司のサポートが高いとメンバーのエンゲージメントが高まり、メンバーのエンゲージメントが高いと上司のサポートが高まるという好循環の関係を示唆しているからです。
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