【Vol.84】自律的なキャリア形成が求められる時代に重要性を増すバウンダリー・マネジメント~仕事と仕事以外の境界が曖昧になる現代の境界管理は個人・企業双方に有意義〜
Ⅰ.はじめに
時間と場所を問わない働き方がコロナ禍で加速し、仕事と仕事以外の生活との境界が曖昧になった人も多い。仕事と仕事以外の生活との境界の管理をバウンダリー・マネジメント(Boundary Management : BM)といい、エンゲージメントや離職率とも関係が指摘されていて、個人のみならず企業にとっても重要性を増している。その必要性が指摘されている自律的なキャリア形成に際してもBMは大事になる。
Ⅱ.バウンダリー・マネジメント(BM)とは
仕事と仕事以外の生活の浸透のパターンや生活の状況・環境、個人の選好に応じて、各自に適したBMは異なる。また、BMのコントロール度を高めるには3つの資源(時間的・物理的、心理的・認知的、他者との関係)が必要だ。個人は随時自身のBMを振り返り、必要な資源やその時々に合ったBMを行うことが求められる。
Ⅲ.自律的なキャリア形成とBMとの関係
自律的なキャリアの形成には将来への視点が欠かせない。そこでBMについて、従来のBMにおける「現在」の仕事と仕事以外の生活との境界のマネジメントという前提に「将来」という時間軸を加えた検討を試みる。将来を見据えた自律的なキャリア形成に向けた取組みを現在行う上でもBMは重要である。
Ⅳ.自律的なキャリア形成とBMのために個人および企業・上司ができること
BMは生活の状況・環境や選好に応じて個人が行うものだが、個人だけで完璧にできるものではない。特に、自律的なキャリア形成に取り組むにあたっては、BMに必要な資源の獲得・再生・維持が一層難しくなる。近年のキャリア論で出てきた「持続可能なキャリア」の考え方では、資源の獲得・再生・維持への企業や上司の役割を指摘しており、そうした企業や上司による支援は今後より重要になるといえる。
Ⅴ.むすび ~キャリア自律への社会的要請で難しさを増すBMに個人と企業が取り組む意義~
個人のBMやキャリア自律の実現は、従業員の離職率の低下や組織へのコミットメントなどの企業に好ましいアウトカムとの関係が指摘されている。個人のBMとキャリア自律を支援する経営は、その実現により自律的に仕事をする人材に成長した個人を企業の力にする人的資本経営の一側面と捉えられる。
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