【Vol.76】1.カナダにおける公的健康保険と介護保障制度・民間健康介護保険~民間健康保険と民間介護保険の役割~
I.はじめに
カナダは公的部門の州・準州が特徴的な方法で独自に健康保険システム・介護保障システムを運営している。特徴ある公的部門という事業環境のなかで、民間健康保険・介護保険の役割と特徴を検討する。
II.現在の健康保険システムの基本構造と法制
健康保険システムの利用は無償でアクセスでき、年齢・経済状態によって妨げられないという基本構造がある。その法制的基礎は1984年立法のカナダ保健法にあり、その理念は今日まで継続している。
III.健康保険システムの沿革
1947年にサスカチュワン州政府による公的病院保険制度創設後、連邦政府は州・準州政府と協定等の締結を通して資金交付している。各州・準州の独自運営だが、基本的に整合した健康保険システムが形成された。
IV.無償のメディケアの仕組み
患者は、最初に私的クリニック医師の診察・治療を受け、その医師が必要と判断したときは専門医師または病院に紹介される分業体制を取っている。
V.メディケアに関する課題と様々な意見
患者が治療等を受けるまでの長い待機期間の問題を抱えるメディケアに、私的クリニックで自由な診療を受けられる仕組みを導入する動きがあり、激しい論争が続いている。
VI.民間健康保険の市場構造・役割
民間健康保険の市場は団体中心で、その役割はメディケアの病院・医師サービスで提供されないサービス購入を実現することと限定的に存在する私的なクリニックのサービス購入を実現することである。
VII.カナダの介護保障の概要
介護保障サービスの主体は州・準州であり、その財源は、州・準州の財源だけでなく連邦政府からの移転による資金交付の財源も含まれる。
VIII.オンタリオ州の事例
カナダ全人口の4割弱と2番目に広い面積のオンタリオ州は、14の地区に分けたローカルコミュニティで在宅とコミュニティの施設を利用して、無料または一部自己負担で介護サービスを提供している。
IX.民間介護保険の内容・市場・役割
民間介護保険は家族介護が得られないときや公的な介護サービスが不足するときに有効な解決手段であるが、実際には民間介護保険は長く販売不振が続いてきている。
X.カナダの民間健康保険・介護保険の役割・特徴
公的健康保険システムの保障範囲が広く私的クリニックに対する反対意見・反感があることから民間健康保険の役割は限定的であり、高齢化の進行が保険手配を促すほどでないので民間介護保険は販売不振である。
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