【Vol.81】2.ヘルスケア分野のパーソナルデータ活用の課題と対応 ~他分野の取り組みからヒントを探る~

主任研究員 岡島 正泰、主任研究員 菊武 省造

Ⅰ.はじめに

デジタル化の進展とともにパーソナルデータの活用が進んでいるが、ヘルスケア分野では、新型コロナウイルス感染症の流行を経てその遅れが指摘されるケースが増えている。パーソナルデータ活用は、サステイナブルな医療・介護システム構築などの社会課題の解決に向けた社会的要請でもある。ヘルスケア以外の分野の取り組みから、ヘルスケア分野のパーソナルデータ活用に向けたヒントを探る。

Ⅱ.ヘルスケア分野のパーソナルデータ活用 現状と課題

新型コロナウイルス感染症への対応を経て、医療機関や保健所のデジタル化や、データに基づいた効率的な医療提供体制の整備が不十分であること等が課題として認識されてきた。政府は、電子カルテの普及、データ標準化、全国医療情報プラットフォームの推進、オンライン診療の普及といった取り組みを推進していく模様だ。平時の医療提供体制においても、医療機関の電子カルテデータの活用、パーソナルヘルスレコードの活用、パーソナルデータの2次利用等の様々な課題が存在する。そこで、ヘルスケア以外の他分野にも共通する課題として、「データ提供者である個人のプライバシー保護」「データを提供する個人へのインセンティブ提供」「データ標準化によるシステム間の相互運用性の確保」の3点に注目する。

Ⅲ.他分野のパーソナルデータ活用促進の取り組み

データ提供者である個人のプライバシー保護に関しては、情報銀行や、スマートメーターを経由した電力データにおいて進展している、認定機関を通じた第三者提供の仕組みが参考となる。データ標準化によるシステム間の相互運用性の確保は、銀行のAPI接続の努力義務化によって、多くの新サービスが提供され始めている点が参考になろう。データを提供する個人へのインセンティブについては、信用スコアを用いて低与信の人にも融資を行っている事例がヒントになる。

Ⅳ.まとめ

他分野における工夫の中には、ヘルスケア分野にも応用できる取り組みが含まれていると考えられる。これらを参考にして、パーソナルデータ活用の遅れが指摘されるヘルスケア分野における取り組みの加速に期待したい。

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