【Vol.78】5.コロナ禍で進化する政策判断における民間データ活用~急速に進展したナウキャスティングを中心に~

主任研究員 菊武 省造

I.はじめに

民間を中心に生成されるビッグデータの普及を受けて、政府や中央銀行は足元の経済情勢を把握する「ナウキャスティング」の研究を進めてきた。本稿では、ナウキャスティングが注目されている背景を示した上で、今般急速な進展を見せているナウキャスティングの取り組みについて解説する。

II.ナウキャスティングとは何か

ナウキャスティングとは、直近の経済情勢を迅速に把握する手法である。「速報性」「データ量の膨大さ」「データ利用に係るコストの安さ」といった特徴を有する民間データがナウキャスティングでは主に活用される。

III.ナウキャスティングの研究・取り組み事例

2010 年代半ば頃から、日米欧の政府・中央銀行、あるいは国際機関において、インターネット検索データ、POS(販売時点情報管理)データ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)投稿等の民間データを用いて経済情勢を速やかに把握しようとするナウキャスティング手法の研究開発が進められている。ただし、民間企業からデータを提供してもらうためのインセンティブ設計やデータの信頼性確保など課題も多いため、実用化に至ったナウキャスティングの事例は少ない。

IV.コロナ禍での急速な実用化進展

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、各国の政策当局が迅速な政策対応を迫られるなか、ナウキャスティング手法の実践的な活用が急速に進められ、またその多くで有用性も実証されつつある。

V.おわりに

今般のナウキャスティングの積極活用は、民間企業によるデータの無償提供といった協力によって成り立っている。公的機関が民間データを今後も継続して利用するためには、ビッグデータを保有する企業が、プライバシー保護とビジネスとしての採算確保を両立できることが重要であり、そうした環境の醸成に向けた国内外での議論を期待したい。

PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
右のアイコンをクリックしAcrobet(R) Readerをダウンロードしてください。

TOPへ戻る