年代別に見た消費の姿
個人消費の停滞が続いている。家計最終消費支出は四半期連続で減少しており、自動車減産という特殊要因の影響があるものの、消費の弱さが際立っている。賃金こそ大きく上昇しているものの、物価上昇率がそれを上回るため、実質賃金が減少し、消費が抑制されるという構図が続いている。
ただし、消費動向は年代によって異なる点には注意が必要である。クレジットカードの決済データから作成されるJCB消費NOWによると、財・サービス共に若年層の消費が強く、年代が上がるにつれて消費が弱くなる傾向がうかがえる(図表1、2)。消費に年代別の相違が生じる理由として、以下の3つが考えられる。
第一に、賃上げの影響が挙げられる。賃金構造基本統計調査をみると、若年層の賃金の伸びが中高年と比較して高いことが示されている(図表3)1。加えて、引退したシニア層には賃上げの恩恵は及ばないこともあり、高い賃上げの恩恵は、年代によって異なることになる。
第二に、物価上昇の影響が挙げられる。消費抑制の大きな要因として物価上昇が挙げられるが、年代によって消費ウエイトは異なり、物価上昇による消費抑制効果も異なるものになる。高齢者の場合、支出全体に占める食料費や電気代といった生活必需品の割合が高い傾向にあり2、これらの価格が大きく上昇する中で3、その影響も大きくなる。
第三に、依然として残るコロナへの警戒感が挙げられる。新型コロナウイルスの感染拡大から4年以上が経過したことでコロナへの警戒感は大きく和らいだが、高齢者に関しては重症化への不安感が一定程度残存しており、そのことがサービス消費回復の足かせとなっているものとみられる。実際、物価高の中においても高齢者のサービス消費はコロナ前の名目値を下回っている(図表2)。
以上のように、個人消費の弱さに注目が集まっているが、年代によってその動向にはバラつきがある。消費の回復は日本経済の動向を占う上で重要な要素であることはもちろん、物価と賃金の好循環に直結することから、金融政策にも大きな影響を及ぼすことになる。消費の弱さがどのように生じているかを識別する上でも、年代別の消費動向は今後も注視する必要があるだろう。
- 55~59歳が前年比+1.6%、60~64歳が同+3.5%、65~69歳が同+11.4%と高い伸びを示しているが、これらの年代については、後述の物価上昇の影響やコロナへの警戒感等が消費を抑制しているものと考えられる。
- 例えば、直近のデータである2024年5月の家計調査(二人以上世帯)をみると、全消費支出に占める食料品の割合は34歳以下が26.7%なのに対して、65歳以上は31.5%となっている(電気代は34歳以下:3.4%、65歳以上:4.3%)。
- 直近のデータである2024年5月のデータをみると、消費者物価指数(総合)が前年比+2.8%であるに対し食料品は同+4.1%、電気代は同+14.7%となるなど、生活必需品の物価上昇率は高いものになっている。