Waymo、サンフランシスコにて自動運転タクシーを遂に一般開放 ~現地レポートを交え~
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6月25日(現地時間)、Alphabet傘下のWaymoは、カリフォルニア州サンフランシスコでレベル4※注1の自動運転タクシーサービス「Waymo One」を一般開放すると発表した。Waymoがこの地で最初に公道走行試験の認可を取得した2014年から、実に10年越しでの社会実装となった。
ODD(運行設計領域)は、サンフランシスコ市内全域を対象とし、天候を問わず24時間運行可能で、最高時速は65マイル(約104km)まで認められている。サンフランシスコにはセンサー泣かせの霧のシーズンがあるが、Waymoはこうした悪天候も攻略したようだ。一般開放されるのは、アリゾナ州フェニックス(と近隣都市の一部)に次ぐ2都市目となる。
もっとも、Waymoは2021年9月末時点でカリフォルニア州運輸局(DMV)からレベル4で商用運行可能な「Deployment」の認可を取得し、2023年8月には州公益事業委員会 (CPUC)から有償で旅客輸送を実施できる認可も取得していた。
しかし、Waymoは慎重にサービスを展開してきた。自動運転タクシーはアプリで配車すると無人の自動車がやってくる新種の移動サービスである。Waymoでは自社の戦略として、レベル4の運行エリアを拡大する際、まず該当のエリアで従業員に試験利用してもらう。次に、社員の知人・友人、近隣住民、ウェイトリストに登録中の利用希望者などに順次インビテーションコードを配布してユーザー数をコントロールしながら規模を拡大していき、最後に一般に開放することとしている。
このような段階を踏んだ展開手法を採っている理由としては、まず、新しい技術やサービスには社会受容性の醸成が必要であることが挙げられる。これは乗客だけでなく、エリア内の他の交通参加者、すなわち同じ道路上を走行する他の自動車や自転車のユーザー等にも自動運転タクシーという新たな存在、その挙動を知ってもらう意味もある。また、需要に配備台数が追いつかなくなると、配車に要する時間が長くなりユーザビリティが落ちてしまうため、需給バランスを見ながらユーザー数と台数規模を拡大していっている側面もある。ほかにも、無人の車両※注2にいたずらをされないかなどトラブルの発生状況を見極める意図もあるようだ。ちなみに、現在、招待制で運行されているエリアには、ロサンゼルスとテキサス州オースティンがあるが、どちらも今年中の一般開放が目指されている。
筆者はサンフランシスコで実際にWaymoを利用してみた。実地で2,000 万マイル以上、シミュレーションで200億マイル以上の圧倒的な走行実績に裏打ちされたWaymoのシステムは、市街地を他の車両と共に時速25~40km程度で走行。一般的に自動運転車にとっては苦手な場面とされる登り坂や路上駐車の回避などを難なくこなし、路上の隙間に適切な駐車場所を見つけて乗客を乗降させてくれた。おそらく、現在、日本で実証実験されている車両の多くは、進路を選択できず立ち往生してしまうか、人間のドライバーに介入を求めるような場面が多々あった。
自動運転タクシーは、シリコンバレーを擁するカリフォルニア州が先端技術の発展を後押ししてきただけでなく、現地の環境政策を実現するツールでもある。車両はジャガーのBEV「I-PACE」を採用し、再エネ100%の電気を充電して走っている。カリフォルニア州は全米で最も厳しいZEV規制を敷いており、さらにサンフランシスコ市は2040年にネットゼロの実現を目指している。人々を内燃機関のマイカー移動から脱却させ、限られた台数の電動タクシーを効率よくシェアして使わせるWaymoの存在は、現地の交通システムの転換の一翼を担っている。
地方部における移動の足の確保や公共交通網の維持などを優先して開発が進められてきた日本のレベル4とは異なり、米国では多くの潜在ユーザーがいる都市型のタクシーを主戦場にレベル4の開発が進められてきた。結果、日本では考えられないような複雑なODDで、市街地を自在にルートを設定して走る自動運転サービスが既に展開されている。
さらに、Waymoは今年に入り、高速道路を組み合わせたルートでの走行試験を開始している。実用化されれば、自動運転タクシーによる遠距離移動が可能になるだけでなく、比較的近距離であっても移動時間の大幅な短縮が叶うほか、「空港から市街地まで」といった典型的なタクシー・Uberの利用場面を自動運転タクシーでカバーすることが可能になる。
ライバルのGM・ホンダのCruiseも、2023年10月に人身事故があり、全米で運行を停止していたが、今年5月からはフェニックスで、運転席に保安要員を置いた状態ではあるが運行を再開している。
現状、Waymoは米国内でのエリア拡大に注力しているが、Cruiseは米国内に留まらずドバイや日本への輸出を決めている。最先端の自動運転サービスが進展するエリアの1つである米国からは今後も目が離せない。
※注1/自動運転には1~5の技術レベルがある。レベル4は、速度や時間帯、道路、天候など自動運転システムを利用可能な条件に制約(ODD、運行設計領域)はあるものの、緊急時に路肩に安全に停止するといった対処を含む一連の運転行為をシステムが担えるレベルのこと。バスやタクシー、物流サービスを無人で担える自動運転レベルとして、今、最も開発が過熱している。
※注2/車内は無人だが、車内の様子は遠隔監視されており、乗客への案内等が必要な場合には遠隔地から人間のオペレーターが対応する。この点は、日本のレベル4規制も同様であり、人間の目が無くなるわけではない。