シティ・モビリティ

アフリカの時代と移民の行方
~国連世界人口推計で見る世界②~

上席研究員 岡田 豊

「国連世界人口推計2024年推計(World Population Prospects 2024)」の中位推計を地域別・年齢別に見ると、今後はアフリカの時代となろう。アフリカの生産年齢人口は今後も増加し続けるが、最大の生産年齢人口を抱えるアジアは早くも2043年にピークを迎え、その後は減少の一途であるからだ。先進国を中心に、少子化の進展から労働力としての移民にかかる期待は大きく、アフリカなどからの移民獲得競争は激化しよう。一方、シニアや女性の活用をより進めて、移民だけに依存しないことも必要である。この点では人口減少下で対策を強化している日本の経験が世界的に役立つ可能性があろう。
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1.はじめに

国連の最新の将来推計「国連世界人口推計2024年推計(World Population Prospects 2024)」では、今後、世界規模で少子化が進展し、人口減少を懸念する時代となることが明らかになった。また、前号「少子化が推計以上に進展する可能性~国連世界人口推計で見る世界①~」にて、国連世界人口推計では2015年推計以降、出生率の下方修正が続いており、出生率の中位推計だけでなく、出生率がさらに低下する可能性を考察した。
 そこで、本稿では今回の国連世界人口推計から地域別人口と年齢別人口を概観したい。その際、出生率中位推計だけでなく出生率低位推計も分析対象とする。そして、生産年齢人口の減少から、労働力を移民の存在感が高まっていくこと点に言及する。

2.アフリカの時代

出生率中位推計にて地域別に人口動向を見ると(図表1)、先進国のうち北米では今後も緩やかに増加するが、欧州はすでに2020年をピークに減少局面に入った。一方、アジア・アフリカの多くで人口増加が続くものの、アジアの人口大国のうち、中国はすでに減少局面に入り、またインドも増加率が大きく低下し、61年をピークに減少していく。そのため、今後も人口増加が長らく続くアフリカに注目が集まろう。
 一方、出生率低位推計ではアフリカも2086年に28億人でピークを迎え、人口減少に向かう。アジアは早くも2039年に50億人でピークとなり、その後は一貫して減少し、2100年には31億人に至り、アフリカとの差はわずかとなる(図表2)。
 特に、アフリカの時代を感じさせるのは、生産年齢人口の行方である(図表3)。2100年までアフリカの生産年齢人口は増加し続けるが、最大の生産年齢人口を抱えるアジアは早くも2043年にピークを迎え、その後は減少の一途である。2100年のアジアの生産年齢人口は、2005年の水準に逆戻りする。アジアでは日本のように、同じアジアの他の国と地方の若い労働者に依存している国が非常に多いが、今後、獲得競争が激化し、中には今後、アジアからアフリカにシフトする国も増えていくと考えられる。
 さらに、低位推計では厳しい状況が明らかになっている。生産年齢人口の中位推計では、2100年までアジアがアフリカを上回っているが、低位推計では逆転してしまう(図表4)。アジアのピークは2036年と目前に迫っており、その対応に残された時間はあまりない。
 また、伝統的に北米への人材供給源となっているラテンアメリカの生産年齢人口は今後ピークを迎え、減少していく。特に低位推計では現在から半減するとされており、北米の人材供給源としてアフリカの存在感は増すばかりであろう。

【図表1】地域別人口(中位推計)

国連「国連世界人口推計 2024年推計」よりSOMPOインスティチュート・プラス作成

【図表2】地域別人口(低位推計)

国連「国連世界人口推計 2024年推計」よりSOMPOインスティチュート・プラス作成

【図表3】地域別生産年齢人口(中位推計)

国連「国連世界人口推計 2024年推計」よりSOMPOインスティチュート・プラス作成

【図表4】地域別生産年齢人口(低位推計)

国連「国連世界人口推計 2024年推計」よりSOMPOインスティチュート・プラス作成

次に、老年人口では、2100年までの増加分はアジアとアフリカでほとんどを占める(図表5)。この状況は低位推計でも変わりない。そのため、アフリカより増加数が多く、アフリカより先んじて老年人口が大きく増加するアジアでは、年金や医療制度の見直しとそれに伴う公的負担の増加、高齢者の就業継続、高齢者の介護人材確保などが今後、大きな課題となろう。

【図表5】地域別老年人口(中位推計)

(出典)国連「国連世界人口推計 2024年推計」よりSOMPOインスティチュート・プラス作成

3.移民が重要になる

国連世界人口推計は、移民数について過去10年平均を将来に延長している。移民に関しては経済社会の影響を色濃く受けるため、長期にわたっての推計が難しい。移民に大きな影響を与えるパンデミック、災害、紛争、政策の動向について予測が難しいからだ。例えば、日本では外国人労働者の入国超過数について、コロナ禍前から行われてきた外国人労働者の在留資格の変更やコロナ禍の入国制限やコロナ禍以降の入国緩和などに大きな変化があったが、国連世界人口推計ではそのような経済社会の変化を織り込まず、過去の実績値を将来に延長する方式を採用している。これは国立社会保障・人口問題研究所の将来推計同様の考え方で、推計というよりも投影といえる。
 したがって、日本の今後の移民数は、国連世界人口推計で年10万人となっているが、これはコロナ禍を含めた過去10年の平均値という位置づけである。これは、国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計の年16万人の外国人増加数(コロナ禍前の平均値)よりも少ない。さらに、2023年の外国人増加数は33万人となっており、国連世界人口推計の3倍となっている。
 しかし、先進国を中心に、少子化の進展から労働力としての移民にかかる期待は大きい。今回の推計で先進7か国の移民の有無別人口を見ると、アメリカやカナダのように移民への依存度が高い国がいくつかある(図表6)。前述のように、世界の生産年齢人口のピークは中位推計で2070年、低位推計で2044年となっており、今後の移民獲得競争の激化は避けられない。

【図表6】先進7か国における移民の有無別2100年人口

(出典)国連「国連世界人口推計 2024年推計」よりSOMPOインスティチュート・プラス作成

4.おわりに

今後の労働力不足の時代は、シニアや女性の活用をより進めて、移民だけに依存しないことも必要である。この点では人口減少下で対策を強化している日本の経験が世界的に役立つ可能性がある。特に、シニアの就業環境の整備は、高齢期の生活の安定に寄与するため、年金制度などの高齢者向け社会保障があまり充実しないまま少子高齢化が進む国にとって、日本の取組みの成否は大きな教訓となろう。
 また、移民の定着については、欧米諸国の教訓が世界各国の参考となろう。家族呼び寄せや出産による移民2世以降の外国人が増えていくことで、労働者としての外国人から住民としての外国人の増加に地域社会として対応していく覚悟が必要である。特に、移民の子どもの教育について、日本人と同等以上に配慮が必要である。

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